大判例

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釧路地方裁判所帯広支部 事件番号不詳 判決

主文

(一)被告人石脇郁二を懲役六月に処する。

但しこの裁判確定の日から五年間、右刑の執行を猶予する。

被告人石脇を右執行猶予の期間中保護観察に付する。

押収してある外国製製造たばこポールモール一一本(証第七号)を、被告人石脇郁二から没収する。

被告人石脇郁二から、金二六七、五一七円を追徴する。

(二)被告人大和田和子を懲役四月に処する。

但し、この裁判確定の日から参年間、右刑の執行を猶予する。

被告人大和田和子から、金二六七、六〇〇円を追徴する。

訴訟費用は、全部被告人大和田和子の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人石脇郁二は、

(一)  法定の除外理由がないのに、昭和三五年一一月八日頃から昭和三六年三月一四日頃までの間、別表記載のとおり前後八回にわたつて、千歳市清水町一丁目一八番地被告人大和田和子方において、同被告人から、日本専売公社の売り渡さない外国製製造たばこ一、八〇〇個(一個二〇本入)を一個一〇〇円の割合で買つて、譲り受け、

(二)  法定の除外理由がないのに、昭和三六年一月二九日頃、帯広市西二条南九丁目六番地谷川啓一方において、同人に対し、日本専売公社の売り渡さない外国製製造たばこ三〇個(一個二〇本入)を一個一五〇円の割合で売つて、譲り渡し、

(三)  右同様にして、同年二月二三日頃、同所において、同人に対し、外国製製造たばこ一一〇個(一個二〇本入)を一個一三〇円の割合で売つて、譲り渡し、

(四)  右同様にして、同年二月二六日頃、同所において、足立伸一に対し、外国製製造たばこ三〇個(一個二〇本入)を一五〇円の割合で売つて、譲り渡し、

(五)  法定の除外理由がないのに、同年五月二〇日、岩見沢市二条西一一丁目佐藤留吉方において、火薬類であるダイナマイト一本、工業雷管二本、導火線約五・五センチメートルのもの一本を所持し、

第二、被告人大和田和子は、法定の除外理由がないのに、昭和三五年一一月八日頃から昭和三六年三月一四日までの間、別表記載のとおり前後八回にわたつて、千歳市清水町一丁目一八番地の自宅において、被告人石脇郁二に対し、日本専売公社の売り渡さない外国製製造たばこ一、八〇〇個(一個二〇本入)を一個一〇〇円の割合で売つて、譲り渡したものである。

(証拠の標目)(省略)

(被告人大和田の弁解を排斥する理由)

被告人大和田の弁護人は無罪を主張するので、この点につき判断する。

なるほど、当裁判所の証人末崎清一に対する尋問調書によれば、被告人大和田方の入口、質受の窓口を改造したのは、昭和三十五年十一月二十五日ごろであることが窺われるのであるが、当裁判所の検証調書によれば右改造によつても被告人石脇と被告人大和田が取引した同被告人方の茶の間自体の構造にはなんら変更が加えられていない。ただカーテンがあつたかどうか、戸が板であつたかどうかの僅少の改造である。このような他人の家の改造については特にそのことに注意をし、意識するのでなければ、明確な記憶がないのであろうことは一般に首肯されるところである。ことに被告人石脇は禁制品である外国煙草を購入にいたつたのであつて、被告人大和田のところに遊びにいつたりしたのではない。そうだとすれば気持の余裕もなかつたであろうことが推測されるのであつて、前示家の改造について被告人石脇が矛盾した供述をしているからといつて、被告人石脇の自白がすべて虚偽であると解することはできない。

次に、被告人石脇は田中または岡田に、使いとして被告人大和田のところに煙草の購入に赴かしめたと供述していることは、弁護人指摘のとおりである、しかしながらそのこと自体犯罪の成否を左右するものではない。ただかかる変転した供述をする被告人石脇の供述が信用性がないかどうかとなると、これは被告人石脇のいいのがれと解すべきであつて、だからといつて売買の対象となつた煙草の本数取引の日時の点までも、信用性を欠くということはできない。

証人佐藤妙子の当公廷における供述によつて認められるところの、佐藤が被告人石脇と同行した日と、この点に関する被告人石脇の供述とは喰い違つている。しかしながら被告人石脇は前後少なくとも数回は被告人大和田宅に赴いているのであつて、誰といつ同行したかとの点について記憶違いもありうる。この点について証人佐藤の供述を信用すべきである。かつ右矛盾があつたとしてもそれはたんに同伴者についてであつて、そのことによつて被告人の自白が信用性を欠き、虚偽となるものではない。

次に弁護人は被告人大和田の供述調書は任意性ならびに信用性がないことを主張する。しかしながら被告人大和田が、昭和三六年五月二七日司法警察員奥村伊作から取調べを受けたときの供述録取書は、いわゆる否認調書であつて、なんら特段の任意性をかく事由は発見できない。次いで同年五月二八日専売監視員天野政男の供述録取書もまた否認調書であつて、真実に合致していない。ところが同年五月三〇日にいたり前示奥村に対して、それまでの供述が嘘であつたことを述べ、被告人大和田以外の者では到底述べることのできないような取引の細部に亘る陳述を含めて本件犯罪事実を自白するにいたつたのである(同被告人の昭和三六年五月三〇日付司法警察員に対する供述調書)。かつその翌日三一日にも奥村に対して右三〇日の供述が間違でないことを附言しているのである(同五月三一日付供述調書)。かつその後検察官に対する同年六月七日付、天野に対する同年六月八日付各供述調書によつても、日時および本数等に僅少の差異がある以外、本件犯罪事実をいずれも認めているのである。右各取調べの経過ならびに証人奥村伊作、同天野政男の当公廷における各供述を合わせ考えると、被告人大和田の自白が任意性を欠き、信用性がないとは到底認められない。被告人大和田は他の強制によらず自ら自己の記憶に基づいて司法警察員、専売監視員、検察官に任意に真実を供述したものと認むべきである。

以上の次第であるから、弁護人の無罪の主張は理由がなく、採用することができない。

(法令の適用)

(一)  被告人石脇郁二の判示第一の(一)別表記載の各行為、判示第一の(二)ないし(四)の各行為はいずれもたばこ専売法第六六条第一項、第七一条第一号に、判示第一の(五)の行為は火薬類取締法第二一条、第五九条第二号に該当し、これらの数罪は刑法第四五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも懲役刑を選択したうえ、刑法第四七条本文、第一〇条により、最も重いと認める判示第一の(一)別表1の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役六月に処するが、情状につき被告人大和田和子との権衡を考慮した上、あえて再度の執行猶予に付することとし、同法第二五条第二項により本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予し、同法第二五条ノ二第一項後段により被告人石脇郁二を右猶予の期間中保護観察に付することとし、押収してある外国製製造たばこポールモール一一本(証第七号)は、同被告人が判示第一の(一)別表8の譲受に係るものであるから、たばこ専売法第七五条第一項により、これを同被告人から没収し、これを除く判示第一の(一)別表記載の譲受に係る製造たばこは、すべて被告人が他人に譲り渡す(判示第一の(二)ないし(四)はその一部である)か、消費してしまつて没収することができないから、たばこ専売法第七五条第二項により、その価格(日本専売公社釧路支局専売監視天野政男作成の同被告人に関する昭和三六年五月三一日付たばこ専売法違反者告発書の追送と題する書面によれば、日本専売公社が公示したウイストン、マールボロ、ポールモール、ケント各一個の小売定価は金一五〇円、同じくラツキーストライク、キヤメル各一個の小売定価は金一三〇円であると認められる)の合計金二六七、五一七円を同被告人から追徴し、

(二)  被告人大和田和子の判示第二別表記載の各行為はいずれもたばこ専売法第六六条第一項、第七一条第一号に該当し、これらの数罪は刑法第四五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも懲役刑を選択したうえ、刑法第四七条本文、第一〇条により、最も重いと認める判示第二別表1の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役四月に処するが、情状を考慮して、刑法第二五条第一項により、この裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予し、本件犯行に係る製造たばこはすべて譲り渡されて同被告人から没収することができないから、たばこ専売法第七五条第二項により、その価格(日本専売公社釧路支局専売監視天野政男作成の同被告人に関する昭和三六年六月九日付たばこ専売法違反者告発書の追送についてと題する書面によれば、各製造たばこの小売定価は前記と同じと認められる)の合計金二六七、六〇〇円を同被告人から追徴し、訴訟費用(証人末崎清一、原田東治郎、奥村伊作に支給したもの)は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文により、その全部を同被告人に負担させることにする。

よつて、主文のとおり判決する。

(昭和三七年五月一五日 釧路地方裁判所帯広支部)

別紙(省略)

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